いまだかつてない伝説

野球をモチーフにした小説でございます。

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FANCY−9

 3回表、チョンボマンズの7番柴内はとにかくしぶといバッターでファールで粘りまくり、相手ピッチャーが根負けするぐらいだ。バットに当てるのはうまいが、カットボールに弱いところがある。これはほとんど安打にしたことがない。ミライズのカットボールを投げるピッチャーといえば、先発投手(右投げ)の剛腕・梨村(なしむら)だ。チョンボマンズをノーヒットノーランに抑えたこともある。
柴内に第1球高めのストレートがボール。第2球内角低めにスライダーがボール。3球目の外角のカーブをひっかけファーストゴロ。柴内にしては珍しく難しいボールダマに手を出した。
【 カットファストボール解説】
カットファストボール(cut fastball)は、直球に非常に近い球速で投じられ、打者の手元でわずかに曲がる変化球である。元々はスライダーやムーヴィング・ファストボールとして分類され、日本では真っスラなどとも呼ばれていた球種。メジャーリーグではカッター(cutter)とも呼ばれる。日本でもカッターと呼ばれることもあるが、一般にカットボールと呼ばれることが多い。直球の握りから人差し指をわずかに中指のほうにずらして握り、リリースの際は斜めにボールを切るように投げることからこの呼び名がついた。直球と見間違えた打者のバットの芯をわずかに外すのが、この球種の主な目的である。(フリー百科事典)

8番ライト張長は華奢な体つきで俊足攻守だが、打撃は貧弱なところがあってポテンヒットや脚でかせがれるボテボテのゴロヒットを警戒するぐらいのものであった。昨年9月、広島パンサーズの右のエース・灰橋(はいばし)の投げそこないのシュートで左中指を骨折し、戦線離脱している。むっふふふ、張長くんには、スライダーとストレートでいってみようかな。ツーワンからボールぎみのスライダーに張長は手を出し、平凡なファーストゴロに終わった。

【 シュート解説】
シュート(shuuto,shootball)は、比較的速い球速で投手の利き腕方向に曲がる変化球で、曲がりながら沈むものと、ほとんど沈まず水平に曲がるものがある。変化球の中でも球速は速い部類で、右投手であれば右打者に対しては食い込むように変化するため、打ちに行った打者はつまりやすく、ゴロを打たせて取るのに非常に有効である変化球であるとされている。また、投手から見てバックスピンと逆方向の回転が若干かかるために、回転方向の関係でバットと反発した際に落ちる方向に打球が飛びやすくなる。これもゴロを打たせやすい理由のひとつである。(フリー百科事典より)

9番ピッチャーのゾンビッピは全く打つ気がなくホームベースからかなり離れて立っている。バットを振ることなく三球三振。
1番林原に第1球、スライダーが内角膝元にストライク、2球目ストレートが外角低めにボール。3球目スライダー内角を空振り、4球目高めのストレートを林原ライトポール際に大ファール。三振前の大当たりの感があった。案の定、5球目のスクリューを空振り三振に終わる。毎旗のスクリューボールは狙ってもヒットするのは難しい。シンカーとスクリューボールは変化が似ており区別も曖昧で明確な定義は無い。しかし、スクリューは落ちる球、シンカーは沈む球と表現されることがある。3回までチョンボマンズはノーヒットノーランナーだ。

【シンカー解説】
人差し指と中指を揃えて縫い目の狭くなった部分に置いて投げる落ちる変化球。サイドハンド、又はアンダーハンドのピッチャーはこのボールが有効。これを腕を上からの角度でスピードをつけて投げるとシンキング・ファストボールとなる。
●シンカー(sinker)は、投手の利き腕方向に沈みながら曲がる変化球である。人差し指と中指を揃えてボールを握り、回転をかけて投げる。投手によっては、中指と薬指でボールを弾きながら手首を外側に捻る場合もある。ボールに回転を与える動作の制約からサイドスロー・アンダースローの投手がこの変化球を習得しやすく、使用することが多い。シュートと同様に右投手の場合は右打者側へ変化し沈むためゴロを狙える。(フリー百科事典より)

【その他球種解説】
◇パームボール◇
パームボール(Palm ball)は緩い軌道で縦に大きく落ちる変化球である。握りはストレートをより深く握ったものである場合が多い。手の平(Palm)で包み込み押し出すように投げることからその名前が付けられている。球種としてはチェンジアップと同じ目的を持つ。

◇スプリットフィンガードファストボール◇
スプリットフィンガード・ファストボール(split-finger fastball)は、比較的速い球速で落ちる変化球である。スプリットや、頭文字をとってSFFと略される。人差し指と中指を大きく開いてボールを握り、リリース時に手首のスナップを効かせ中指と人差指の間に親指を割り込ませてボールを押し出す。直球と似た軌道・球速で縦に小さく落ちるため、空振りを狙うのに適した球といわれている。フォークボールほど深く挟む必要はなく握りやすいため、手の小さい選手がその身体的制限からフォークボールの代用として使用する場合もある。
日本においては1980年代半ばにメジャーから輸入された変化球であるが、高速フォークと呼ばれる物はほとんどの場合この球である。佐々木は浅い握りのスプリットと、深い握りのフォークを使い分けていた。一方アメリカでは1980年代初頭から急速に普及し一世を風靡したが、故障を抱えることが多く「デス・ピッチ」として現在はこのボールを投げる投手は多くはいない。

◇ツーシーム・ファストボール◇
ツーシーム・ファストボール(two-seam fastball)は、単に「ツーシーム」とも言われる。近年になって直球、いわゆるフォーシームファストボールと明確に区別されるようになった球種。ボールの2本の縫い目に人差し指と中指を沿わせて握り、投げられたボールの1回転につき2本の縫い目が回転側面上を通る。直球に比べ、回転で揚力を与える縫い目が少ないため揚力が小さく、フォーシームほどには伸びない。このため、直球を待っている打者にはツーシームは若干沈んだように映り、バットの芯を外すことになる。投球動作、投げ込むコース、握り方の微妙な差などによって、各投手ごとに違った変化が見られる。ムーヴィング・ファストボールとシンキング・ファストボールのどちらとも取れる動きを出せる。

◇ ムーヴィング・ファストボール◇
ムーヴィング・ファストボール (moving fastball)は、速球でありながら打者の手元で小さく変化(横変化が強い)する球の総称である。その特性上ゴロに打たせて取りやすい。握り方や投げ方の違いで様々な変化をするが、いわゆる直球より僅かに球速は落ちる。

◇シンキング・ファストボール◇
シンキング・ファストボール (sinking fastball)は、速球でありながら打者の手元で小さく変化(縦変化が強い)する球の総称である。その特性上ゴロに打たせて取りやすい。握り方や投げ方の違いで様々な変化をするが、いわゆる直球より球速は落ちる。


◇ナックルボール◇
ナックルボール(knuckle ball)は、ほぼ無回転の変化球で、細かく揺れながら落ちる変化球である。名前の由来は、曲げた指の関節(Knuckle)で突き出すようにボールを投じることから。2本もしくは3本の指をボールの縫い目に立て、そのほかの指で支えるように握る。手首のスナップは使わずに腕の振りだけで投じる。リリースの瞬間に、立てた指を突き出して縫い目を弾き、ボールにかけられた回転運動を相殺する。無回転で放たれたボールは、その後ろに乱れた不規則な気流を生ずるため、それによって不規則に揺れながら打者のもとに到達する。その複雑で予測できない変化と一般的な球種とは全く異なる投げ方で、打者はおろか捕手でさえも捕球に苦しむその特殊な変化のために、制球は非常に難しい。加えて、球速が非常に遅いために盗塁されやすいという弱点がある。 また、ナックルボールは捕球が困難なことから、ナックルを投げる投手とバッテリーを組む捕手は、専用に大きめのキャッチャーミットを用いることがある。 ナックルボールは全力で腕を振らないフォームから投じられるため肩や肘にかかる負担が少ない。そのためナックルを主武器とする投手は総じて選手寿命が長い傾向にある。(フリー百科事典より)



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FANCY−8

2回裏、ミライズは8番ショート右バッター武町からの攻撃。報魁第1球、カーブがファール、2球目ストレートが外角高めに外れる。3球目カーブがど真ん中に失投、武町絶好球とばかりフルスイングするが、惜しくもホームラン性のレフトポールから10cmそれる大ファール。ゲッ、武町にあの当たりされるのかよ。不安を覚えた報魁は4球目にめったに投げないフォークボールを投げた。ワンバウンドになりキャッチャーが後ろにそらす。カウントはツーエンドツーの平行カウント。おっと、マウンド上で報魁が苦しそうな表情で左手で右肘を押さえている。どうしたのか。めったに投げないフォークボールを投げたため肘を故障したというのか? マウンドに内野手とベンチからピッチングコーチが駆け寄ってきた。
「どうした、やっちまったのか肘を」ピッチングコーチの戸度(とど)が心配そうに訊く。
「どうやらそんな感じです。投げられません」報魁が申し訳なさそうにしてうなだれる。
戸度はベンチにダメのサインを送った。監督の買読が急遽、代わりの投手を肩慣らしさせる指示を出す。マウンドでは次のピッチャーのために少しでも時間稼ぎする妙案をねっているが、主審にクレームをつけられとしまった。
 監督の買読がピッチャーの交代を告げ、早々と報魁は降板することになった。

【フォークボール解説】
スプリッターよりさらに深く指ではさむ落ちる変化球。一般的にはスプリッターと同じだが、球速がスプリッターよりも遅く、落ちる角度が大きい。
●フォークボール(fork ball)は、落ちる球の一種であり、主に日本等アジアでポピュラーな球種である。ボールの縫い目にかからないよう人差し指と中指でボールを挟んで投げる。親指をボールの下に添える投手が比較的多いが、親指を人差指の横に添えるような握りをする投手もいる。 真下か僅かに右か左に曲がりながら落下するものや、ナックルのように揺れながら落下するもの等がある。直球と同じような軌道から落下するため、打者の判断を難しいものにしており、空振りを期待できる球である。一方で落下点が捕手に近く落差が大きいために捕球が難しく、2本の指で握らずに保持する投げ方から捕逸や暴投の危険性が高い。  指が長い投手なら、フォークボールの握りで速いボールを投げることも可能である。また、ボールを深く握るほど回転は抑えられ球速も遅くなるため落差は大きくなるが、その分握力が要求されコントロールが難しくなる。指の短い投手や、指の関節の硬い投手はボールを深く握れないために良いフォークボールを投げることができない。そのため外科手術によって人差し指と中指の間の腱を切る投手もいる。●ボールの握りが食事で使用するフォークで挟んだように見えることから名付けられ、略してフォークとも呼ばれる。日本ではフォークという呼称が一般的だが、メジャーリーグでは人差し指と中指が離れている握りにちなむ名称のスプリットフィンガード・ファストボール(英: Split-finger Fastball)を略したスプリッター(英: Splitter)と呼ばれ、フォークと言う事はほとんど無い。
本来、スプリットフィンガード・ファストボールはフォークよりも握りが浅く、速い球速で小さく落ちる直球とフォークの中間のような球種だが、両者の判別基準が曖昧な事もあり、ボールを挟む握りで落ちる変化をするものは日本ではフォーク、アメリカではスプリッターとしてまとめて扱われる事が多い。
日本ではスプリットフィンガード・ファストボールは単にスプリットや頭文字をとってSFFと省略して呼ばれる事が多く、高速フォークと呼ばれる事もある。(フリー百科事典より)

ミライズのクローザー拳田(右投手)はフォークボールの使い手として最多セーブ記録を更新中だ。33歳になるが、大きな故障もない、歴史に残る大投手として評価が高い日本を代表するクローザーである。
さて、急遽リリーフに上がったピッチャーは外国人投手のゾンビッピである。チェンジアップを得意とし、大リーグ通産28勝している。
 武町にツーエンドツーからゾンビッピ投げた。チェンジアップで三振をとりにきたが、ファール。2球目ストレート、打球はボテボテのサードゴロ。俊足の武町死に物狂いで走り内野安打にする。9番のピッチャー毎旗は送りバント成功でワンアウト2塁。1番風花に第1球、内角低めのチェンジアップを打つが平凡なレフトフライに討ち取られる。2番藤草も初球打ちでヒット性のライナーだったが、ファーストの好守に阻まれ、悔しさを顕わにしヘルメットをぶんなげた。あやうくボールボーイに当たるところであった。

【チェンジアップ解説】
極端にスピードを落としたやまなりに落ちる変化球。速球を投げる時と同じフォームで投げないと、投げ方でわかってしまう。いろいろ種類があるが一般的には5本の指を縫い目の上にのせ、つまむような握りで投げる。
●チェンジアップ(change up)は、打者の手元で沈む変化球である。初速は直球より20km/h程度遅い場合が多く、回転数が少ない為に空気抵抗を強く受けて失速、落下する。フォーク等に比べ肘や肩に負担が軽いと言われる為、「投手の肩は消耗品」との考えが支配的なアメリカでは非常に重く用いられている。
メジャーリーグには『何だかよく分からない変化球はとりあえずひとつの変化球名にまとめる』という非常に大雑把な慣習があり、現在は球種を特定することが難しく直球ではないという場合はひとまず『チェンジアップ』と呼んでおくことが多く、概念的な球種といえる。他の変化球と違いボールの変化は副産物であったが変化が有るものが主流であり、多様な握り・変化等があり絶対的なものはない。●直球より回転が少なく球速も遅い為、沈む軌道になる。回転の向きがバックスピンから傾いて横回転が加わっていれば右か左に曲がりながら沈むが、変化よりも直球と同じ腕の振りで投げて打者に直球と誤認させる事が重視される。直球と同じ腕の振りから遅い球が投げられる事により、ボールが失速しているように感じられる事もある。一般的なチェンジアップは直球より多少回転が少ない程度のものであるので、直球よりは減速するがその違いは大きいものではない。また、速度は遅く軌道の変化も大きくはない為、タイミングを合わせられると痛打されやすい。(フリー百科事典より)

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FANCY−7

 2回表、マウンドに立っている毎旗は笑っているような顔だ。手玉にとる自信満々の感じだ。4番バッター荒遠はがっしりした体格で外人並みのパワーヒッターだ。あまいところはもっていかれる。失投は許されない。去年はストレートを打たれたな。ヤツがあまり打てないんで、スピードを緩めてしまったわい。130kmだったが、ホームランにならなかったのが不思議なくらいだった。スクリューボールを投げるべきか投げないべきか――。第1球低めボールダマのストレート、第2球外角低めにカーブ、荒遠空振り。3球目内角中のストレート、荒遠待ってましたとばかり振り切った。打球は、左中間に弧を描いてヒット間違いなしと誰もが思った。その落下する打球に人影が見えた。俊足のセンター風花がダイビングキャッチに見事成功した。風花でなければ取れないプレーであった。観衆の大歓声がスタジアムに響く。

【スクリューボール解説】
カーヴと同種だが、手首を逆方向に回転させて投げる。中指をボールのやや左側に置き、スピンさせる。あまりスピードが出ない上に手首を内側にひねる為、投げるのが難しいが、ひねる角度が小さいのでカーヴよりも腕への影響は少ないと言われている。スクリュードライヴァーを使う時のように手首をひねるので、この呼び名がついた。左ピッチャーが右バッターに対して投げるのが効果的。ボールがバッターの内側に向かってくるようで外側に落ちてゆくから。
●スクリューボール(screw ball)は、投手の利き腕方向に落ちながら曲がる変化球である。 人差し指と中指を揃えてボールを握り、回転をかけて投げる。投手によっては、中指と薬指でボールを弾きながら手首を外側に捻る場合もある。落差の鋭い方がスクリュー、沈むような感じがシンカーとされる。元々スクリューとシンカーの区別は曖昧だが、左投手の投げるシンカーがスクリューであるとするのは誤用である。また、故障しやすい球種でもある。
●シンカーとスクリューボールは変化が似ており区別も曖昧で明確な定義は無い。しかし、スクリューは落ちる球、シンカーは沈む球と表現されることがある。また、左投げ投手の投げるシンカーがスクリューと解説される場合もあるが、スクリューボールの開発者であるフォスターとマシューソンは共に右投げの投手である。米国圏では sinker と言うと多くの場合は沈む速球のことを表し、日本でいう「落ちるシュート」やツーシームと呼ばれる物がシンカーとされている。(フリー百科事典より)


5番トンズラーは左打者で長打力がある。第一球、毎旗はトンズラーの脂ぎった顔に視線を送る。ヤツめ、今日も気合満点ってとこだな。投げたのはストレート、うなりをあげてトンズラーの胸元をえぐった。「ボール」とアンパイヤ。147キロの表示が出た。150いかずか――。2球目、膝元にストレートがはずれる。
この俺にストレート1本か、あいかわらず単細胞なやろうだぜ、実はトンズラーは毎旗の変化球は苦手な方だ。ストレートと変わらない投げ方だから、やっかい極まる。ストレート勝負はむしろ、変化球よりも打ちやすいからどうぞとバカにされているようなものなのだ。
3球目またストレート、トンズラー、バットを出したがファール、4球目これまたストレート、高めを空振り、5球目もストレートを狙い打つつもりだったが、85kmのスローカーブで金縛りにでもあったように見送り、三振を喫す。

6番の左打ちの寺屋は大リーグジャイアンツに在籍したこともある堅守の選手だ。むっふふふ、寺屋には、スライダーでいいだろう。ツーナッシングから146km高速スライダーを思いっきり振ったがかすりもしなかった。

【スライダー解説】
横にすべる様に曲がる(右対右の場合、外角へ)変化球。ボールの上から人差し指と中指で鋭いプレッシャーを与えて投げる。カーヴよりもスピードがあり打者の手元で鋭く曲がる。投げそこなうと打ちやすいボールになるので、速球に近いスピードが要求される。速球とのスピード差が5mph(約8キロ)程度の高速スライダーはパワー・スライダーと言える。日本のマッスラという言い方がこれに当てはまる。またアメリカではスライダーも肘への影響が大きいとされ、一般的に未成年には投げさせない場合が多い。
●スライダー(slider)は、主に投げる腕の反対方向に曲がる変化球で、ボールの外側を切るようにして投げる。横に曲がる変化球の名称であったが、同じ握りから様々な変化をさせられるのでシンキング・ファストボールやムーヴィング・ファストボールのように概括的な呼称に成りつつある。直球と同じようなフォームと球筋から比較的速い球速で変化するため打者からは直球と判断されやすく、主に横に曲がる球でありながら空振りを狙うこともできる。習得が比較的容易であるため、1人の投手が縦横・大小複数のスライダーを投げ分けることも多い。変化方向や球速により大まかな分類で特定の呼び名を持つことがある。日本で横滑りするスライダーを投げる投手は少なく、斜めに速く曲がる変化球をスライダーとして投げる選手がほとんどである。関節ネズミという遊離骨折を招くとも言われている。(フリー百科事典より)

2回をノーヒットに抑える上々の出だしだ。毎旗は、報魁との投げあいには勝ったも同然と確信した。開幕先発と予想された石浦は麻雀のやりすぎで体調を崩し病院で点滴を受けているという情報が入っていた。石浦は勝つ寸前勝つ一歩手前でいつもマンズでチョンボするという奇妙なジンクスにとりつかれている男であった。この癖は球団社長の渡西原目雀二郎(わたにしはらめじゃんじろう)と同じで、どうも社長から移った疑いがあった。そもそもチョンボマンズという名前はその球団社長のマンズでチョンボすることから命名されたものであることをチョンボマンズファンなら誰でも知っていることなのである。

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FANCY−6

「さあっ、いよいよ開幕戦・京阪神ミライズ対東京媚売チョンボマンズの試合開始まであと10分をきりました。地元甲寅園球場はすでに9万人の超満員にふくれあがっています。 宿敵東京チョンボマンズを迎えてファンお待ちかねの熱い戦いの幕が今まさに切って落とされようとしています。さて、放送席、解説には元ミライズの300勝投手、笑門(わらかど)さんと元チョンボマンズ名キャッチャーの出井部(でいぶ)さんをお迎えしております。実況は私、友塚(ともづか)がおおくりします。おふたりともどうぞ宜しくお願いします。
 
それでは、両軍の先発メンバーを紹介しましょう。まず先攻東京チョンボマンズ、1番センター・林原(はやしばら)、2番レフト・チビクロチョンボ、3番サード・半束(はんそく)、4番ショート荒遠(あらとお)、5番ファースト・トンズラー、6番セカンド寺屋(てらや)、7番キャッチャー柴内(しばうち)、8番ライト張長(はりなが)、9番ピッチ ャー報魁(ほうかい)、となっています。

一方の後攻の京阪神ミライズは、1番センター風花(かざはな)、2番セカンド藤草(ふじくさ)、3番ファースト新金本(しんかねぼん)、4番レフト片切(かたぎり)、5番ライト桜小路(さくらこうじ)、6番サード・ブリリアント、7番キャッチャー現錠(げんじょう) 、8番ショート武町(たけまち)、9番はピッチャー毎旗、というメンバーです。
 さて、解説の出井部さん、チョンボマンズ・買読(かいよみ)監督、5番先発に鼻下(はな した)でなく、左打者のトンズラーをもってきましたね。トンズラーは去年サウスポー毎旗 に10打数1安打とほとんど打ってないわけですが、これはどう見たら良いのでしょう か?」
「そうですね、鼻下がスタメンからはずれるとは誰も予想しなかったんじゃないでしょ うか」
出井部の顔がにがりきっている。出井部はトンズラーを出すくらいならまだ右打者の 凡保(ぼんぽ)のほうがましだと思っているのだ。自分より先に監督の座についた買読怪郎(かいよみかいろう)には、そのライバル心が嫉妬しているようでもあった。
「鼻下は顔色が悪いですね。あれはスタメンからはずされたため気分を悪くしたんじゃ ないでしょう。どこか体調でも悪いのかもしれませんよ」
 ベンチでどことなく精彩を欠いている鼻下をながめやって笑門が口をはさむ。
「そういえば、笑門さんおととい鼻下選手と数人でキャバクラに行ったとか、行かなか ったとか、噂になっていますが……」
 アナウンサーの友塚が笑門に疑惑の目を向ける。
「ムッムムムムム、それは秘密」
 笑門がばつが悪そうにとぼける。
 「さあ、白に縦じまのユニフォームのミライズの選手が守備につきました。始球
始球式は女優の券同きいこさんです。
おっと、これはすごい!『きいこ、きいこ、きいこ!』の大声援が球場全体をおおっています。
私などはホントに鳥肌が立ちそうです。これはちょっと選手に対する声援よりすごいか もしれません。その人気女優の券同きいこさん、なんでも毎旗投手の大ァンだとか。今、 券同きいこさんボールを投げました。おーっ、見事にキャッチャーに届きました。今、そばにいる毎旗投手と握手して観客に手を振って券同きいこさんマウンドをあとにしました」
「いやあ、うらやましいですね。実は私ね、彼女のファンなんですよ」
 笑門が思わず本音をもらした。毎旗が羨ましくてならないのか、顔が紅潮している。ホンドに好きなのか。

「京阪神ミライズ先発の毎旗は、これが2年ぶり3度目の開幕投手。一昨年はチームは優勝しましたが、毎旗は12勝10敗と不本意な成績に終わりました。防御率も3.57と投手部門の賞はひとつもありませんでした。去年は15勝を挙げ、防御率も2.12の2位と悪くはなかったのですが、チームは3位。今年はどうなるのかたのしみです。マウンドの毎旗、あいかわらずのポーカーフェースで開始前の投球練習をやっています。
まもなくプレイボール。オレンジ色のユニフォーム、オレンジ色のヘルメットのチョンボマンズトップバッター・林原が右バッターボックスにはいりました。」
「プレイボール! 」
球審が右手を上げ試合開始を宣告した。
「ピッチャー毎旗第一球を投げました! ストライク! 外角低めに150キロのスト レートがズバリ決まりました。初球打ちを得意とする林原ですが、手が出なかったのでしょうか、出井部さん」



【直球解説】
●直球は、投手が投じる球種のうちでもっとも球速が速く、概して直進する球種である。 場合によっては160km/hを超えることもある。これは、ストレート(straight)、真っ直 ぐ(まっすぐ)、あるいは英語の本来意味するものとは異なるが、fastballの直訳で速 球(そっきゅう)とも呼ばれる。近年ではフォーシームファストボール(four-seam fastball)と称される事も多いが、フォーシームファストボール=直球 とは限らない。力学的には(種々の損失はあるが)速い投球ほど打球の飛距離が出ないので、最も本塁打を打たれにくい球種といえる。(フリー百科事典)
●縫い目の広がった部分に指先をかけて投げる。 バックスピンがかかり、ホップ気味で伸びのある速球(参考までに言うと実際にボールが浮き上がるという事は絶対にない)となる。特に伸びがあるボールをラ イジング・ファストボールと言う。バットを垂直に構えるバッターはローボールヒッターなので、このボールが効果的。また遠投する時はこの握りで投げる。そ うした方がより遠くに投げることができるからだ。(以上抜粋)


「ちょっと今のストレートは手が出なかったのでしょうね。林原は直球より変化球を打 つのがうまいですからね。スライダーなんか待っていたのかもしれません。まっ、しぶ とさが身上の林原だけに追い込まれても対応できるとは思いますがー」
「第2球、ボール。またストレート、真ん中高めに大きくはずれました。第3球投げた、
打った、ファール。バックネットを越えていきました。今のもストレートでしたが、毎旗の球威に押されているような感じがしますが、笑門さん」
「今日の毎旗はいいですよ。チョンボマンズ打線は手こずるでしょうね。でも今のストレー トによくついていきましたよ、林原」
きょうはいけるという顔つきになって自信ありげに笑門が答える。
「3球続けてストレートでしたが、第4球、毎旗投げた。空振り三振! 内角低めに切 れのいいスライダーがきまりました。これは、ボールダマじゃなかったですか」
「うーむ、今のはきわどいですね。見逃せばボールだったかもしれませんが、追い込ま れているだけに、さすがの林原もバットがでましたね。かすりもしなかったでしょう。 林原の調子は悪くはないんですがね」
眉をくもらせ出井部が、エキセントリックリーグの南武ドルフィンズからチョンボマンズにトレードされ、たいした活躍ができなかった出井部が、南武のバッティングコーチにも招聘されている出井部がチョンボマンズの前途を悲観した。
結局1回表の媚売の攻撃は三者凡退に終わった。その裏、ミライズは、トップバッターの風花がツー ストライクツーボールと追い込まれながら、ライト前ヒット、二番藤草が送りバントを 失敗するが三番新金本がツーストライクワンボールと追い込まれながらサード強襲の内野 安打でランナー1、2塁の先制のチャンスをもたらす。勝負強さでは、球界随一の片切 黎大の登場で、スタジアムは爆発的歓声に包まれた。
キャッチャーの柴内がマウンドに寄っていく。
「どうする報魁、無理して勝負しないほうがいいだろ。次は相性のいい桜小路だ。得意の カーブでゲッツーといこうぜ」

【カーブ解説】
●カーブ(curve)は、日本では最もポピュラーな変化球である。投手の利き腕と反対の方 向に大きく曲がりながら落ちる。中にはスローカーブやスラーブといったような、アレンジされたカーブを持っている投手もいる。正面から球を押さず、中指あるいは人差指と、親指を 用いて回転をかけて投げるため、球速は遅いが独特の大きな弧を描く。軌道が曲線を描 き球速も遅く、一旦浮き上がって失速するがその後大きく落ちるため落下運動で加速が 加わるなど直球と相反する性質を持つために、緩急をつけて打者のリズムを崩したりす るためによく用いられる。本来は速球に近い軌道からブレーキがかかり急激に落ちなが ら曲がるのがよいとされている。球速や軌道が他のどの球種よりも特徴があり、打者に 球種を見極められやすい。そのため、投球ごとに大小の変化をつけたり、軌道を変化さ せたりするバリエーションを持つ投手も存在する。日本においては、指導者が初めて習 得する変化球として、カーブの投げ方を指導することが多い。一方アメリカでは最初に チェンジアップを指導することが多い。(フリー百科事典)
●投げる時にボールに大きな回転を与える事で、空気抵抗の関係により曲がる変化球。中指をボールの上部またはやや右の位置に置いて手首をひねりながらリリースする。昔で言うドロップ(60年代には主流だった)。スクリューボールより速くスライダーより遅い。右対右の場合、時計で言うと12時から6時(つまり真下)〜1時から7時の角度で落ちるのが主流。ちなみにスクリューはスピンが逆。(以上抜粋)

「いや、オレは片切とは真っ向勝負するしか考えていない。スリーランでもまだ初回だ 」
「だがな、あっちは毎旗だ。せいぜい良くて3点取れればいいとこだ」
柴内は片切と毎旗との試合は常に接戦に持ち込まなければ勝機を見いだせないという判 断である。ピッチャーの報魁はとにかく納得のいく投球勝負にこだわるタイプであった。
結果、媚売バッテリーは片切と勝負することにした。カウントワンエンドワンから、片切は報魁のストレートを狙いすました豪快なスイングはものの見事にバックスクリーンに運んだ。ストレートばっかし投げやがって、どうしようもないやっちゃで……、柴内はこうなることは目にみえていた。片切はストレート大好き人間なのである。いいかげん報魁は、自分の実力に覚めてもらいたいもんだよ。桜小路にはカーブしか投げず三振にうちとった。ブリリアントはショートフライ、現錠は、セカンドゴロでなんとか3点で初回を終えた。

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FANCY−5

 今年の開幕日は4月1日である。去年のペナントを制したのは横浜ブルーサックスであ った。
今年の開幕カードは、ブルーサックスは、去年4位の名古屋ファルコンズ、2位の渋谷ダッフンダーズは、5位の広島パンサーズ、そして、京阪神ミライズは、去年は首位と5ゲーム差で3位に甘んじたわけだが、宿敵チョンボマンズは、戦前の予想を裏切って最下位であった。そのチョンボマンズを地元北宮市、丙寅園(へいとらえん)スタジアムで迎え撃つのである。※高校野球のメッカ甲子園は近くの西宮市にある。
 過去20年間、京阪神ミライズは優勝9回、一方宿敵チョンボマンズは6回、ブルーサックス2回、ダッフンダーズ、ファルコンズ、パンサーズそれぞれ1回ずつである。毎年、ミライズとチョンボマンズの両雄が優勝候補に挙げられ、両球団はファンシーリーグを背負う花形球団としてしのぎを削り、ファンを熱狂的渦に巻き込む存在なのだ。
 とにかくこの両球団が対戦するときは、丙寅園スタジアム、オレンジドーム、いつも超満員になり熱狂興奮の坩堝と化す。ファンにとってはこれほどたまらないものはないに違いない。その両球団が今年は開幕戦で顔を合わせるというのだから、注目度も大きく盛り上がりも尋常ではないように思われた。まるで今年のペナントレースが、この一戦で決まってしまうかのような大一番にファンは仕立ててしまっていた。
 開幕投手を任せられた毎旗傑策は、当日、昼食を行きつけの喫茶店ですませてから球場 に向かった。車は白のベンツである。短髪で精悍な顔つきはスポーツマンらしい。男前 に見ようと思えば見えるし、俳優のような雰囲気も漂わせている。途中、タクシーの車 中から毎旗に手を振って嬉しそうにしているふたりの若い女の子がいた。彼女たちも球 場に向かっているのだろうか。白いベンツの運転席の男がスターの毎旗と知っている様 子で憧れのスターをまのあたりにして良い思い出になったに違いない。慎重に運転をし ながら毎旗は徐々にテンションを高めていった。相手チョンボマンズの打者9人をイメージしながら、自分独自の投球パターンを考え組み立ててみる。キャッチャーの現錠とは相 性がいいのか、現錠はほとんど毎旗の望み通りに配球を組み立ててくれる。きょうも現錠はおれが考えたパターンを読んで受けてくれるはずだ。それが勝利への近道というも のだと毎旗は確信している。サウスポー独特の右打者の内角に突き刺さるストレート、 クロスファイヤーは毎旗にとって最も得意とするものである。それは芸術といえるもの であった。チョンボマンズの四番打者荒遠でさえ、容易に打てる球ではなく、それだけに毎旗の渾身のストレートをはじき返すバッターはまさに一流の証しともいえるだろう。
 毎旗の持ち球、球種は、スライダー・カーブ・スクリュー・フォーク・ストレートの 5種である。本来、力でねじ伏せようとするタイプだけにストレートが多いが、反面、 打者の読み筋をはずすのもうまく、変化球でやんわりかわすこともある。三振にこだわ るタチではあるが、調子の悪い時は、打たせてとる投球術も見せ付けることができるの だから、相手からは緩急自在の非のうちどころがないピッチャーに思われているのであ る。

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